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    これはちっとも可笑おかしくない!彼ら二人は実にいい夫婦なのである。

    が、練吉が駆け登つたのを見ると、先方の男は急に威丈高になつて怒鳴つた。

    「ウシ!ウシ!」

    「それは、せんせいのお考へに任せますわ。――ですが、今日のことは、ほんの内輪の間違ひやさかい、そのことは含んどいてもらはんと困ります。よろしいな。――内輪のことや」

    房一はその時、これは思つたより以上に面倒だな、と感じた。この場だけを円めればいゝといふわけにはゆくまい、云ひがかりをつけられるかもしれぬ。それから、徳次をこの場から去らせても後で鬼倉の配下の者に狙はれるかもしれぬ、といふことを突嗟とつさに考へた。彼は腹をきめた。そして、相手の顔に目をつけながらゆつくりと答へた。

    答へながら、彼は紅くなつていた。

    「はい、あの、切れて居りますが」

    「さあ、どうぞ。仇かたきの家へ行つても朝茶はのめ、と云ふことがありますよ。お茶ぐらいはのんでもらはんと――」

    朝早くから徳次が探し歩いてくれたので、房一には追鮎の素晴しいのが手に入つた。浅瀬につけた追鮎箱の中で、肥つた生きのいゝそいつは青黒い美しい背をたえまなく左右に動かしながら、きれいな水に洗はれて、たとへやうもなく靱しなやかに強く見えた。鼻先に短い針を通して糸につけて放すと、そいつはいきなり激しい力をもつて水の深みに走つて行つた。

    「高間さん、ひとつ何とかして引上げさせて下さい。このまゝでは――」

    「坑には入つてみたんかね。あすこはもう何年も入つた人がないちふことだが」

    「どうもおれは、身近かな者だと平気で診られないんだね」

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